2021.03 個展 制作について


360個の部屋を制作しました。
区切られた部屋の中にそれぞれの生活があり、生き物や景色があり、たくさんの世界があります。
繋がりがあるものもないものも、等しく壁と窓がありこの会場に確かに存在しています。
部屋同士は混じり合うことはありませんが、うちうちで楽しく広がる世界を持っています。
また部屋は時として混じり合わずとも同じ世界を共有することはできます。


華やかさや豊かさ、生命が溢れるような歓びを表現することを作品のテーマとして制作しています。
それは展示空間に入ったその瞬間に、心が弾むようなきらめきや期待、予感で胸がいっぱいになる作品です。
作品のテーマを今回はどのような形で表すかを考え出した2020年1月頃に、新型コロナウイルスが流行し始めました。
時が経つにつれ流行が拡大し、世界の状況が変わっていく様子を見ているうちに今までの作品テーマをそのまま形にすることへの
違和感が生まれました。状況や生活から楽しさや華やかさ、美しさだけを出せない苦しさ、美しさだけを出すことへの矛盾、作りたいのに
進まない。まるで現実が自分の表現に蓋をしているような感覚ですが、その感覚を見つめ適切な形にしたのが360個の部屋です。
一つ作ったらまた次へ、360個の切り替えは広げていきたい世界を強制的に終わらせ次の部屋の世界へ向かわせます。
これは大変もどかしいことでしたが、上記の感覚との繋がりを感じさせるものでした。
そのような中であっても根本のテーマは変わりません。
華やかさや豊かさ、ワクワクする気持ちはいつでも持ち、厳しい中であっても慎重に丁寧に探りながらきらめきを、
優しさを部屋の中にたくさん作りました。